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「どうしても学問をやるというて聞きませんだつたが。――それで神戸高商を出ましてな住友へ入つて結構やつとりましたが、三年前にぽつくり行つてしまひましたよ。病気ですか?結核性脳膜炎とか云ひましてな、十日ぐらいで、あつさりしたもんでした」
あるとき一人の女の客が私に話をした。
「あの山に田地を注ぎこんで裸になつたのは三人、わしも知つとる」
「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」
徳次はきまり悪げに、しかし、又あのきよろりとした眼つきにかへりながら云つた。
男は眼を閉ぢた。何も答へなかつた。
我々はそれから「き」の字橋まで口をきかずに歩いて行ゆきました。……
「杉倉まで――」
と、小谷が徳次の足に目をつけて云つた。どこで手に入れたのか、徳次は白い紙緒の藁草履をちやんとはいていた。
「いや、さういふことは人によつてはあるんだよ」