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私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。
と、房一は机の上に虫の卵の形を書いてみせた。
「なんですか、御挨拶まはりですかね、それはどうも御苦労さまですなあ。――まあ、お上り下さい」
「あいつも、君んとこと同じで、子供ができたらしいよ」
「や、これは。高間さんですか。お久しぶりで」――「お忙しいですか」
「それでは」
「ほう、ほんに!みんなある」
「閉口でしたな」
半ば感心し、半ば疑はしさうに、彼は指を自分の眼に向けてみた。
「やあ。先日はどうも」
「ぜひ、さういふことに」
横合から冷かすやうに口を入れたのは雑貨店の庄谷だつた。痩せた上に黒く日焼けがし、固く乾いたやうな顔には小さいが白味の多い眼がいつも人を小莫迦こばかにするやうに閃いていた。彼はさつきもその眼で入つて来たばかりの房一を見、房一が挨拶すると「あン」といふやうな声を出しただけで、すぐに話に聞き入つていたのだつた。
「いや、鳴つた。出張所の鐘がたしかに鳴つていた」